数学
2026.06.26

論理学で学ぶ数学 Theme2

01

問題

次の各文を論理記号を用いて表現せよ。また,(1)〜(4)を関数 f(x)f(x) と実数 MM についての条件と見たとき,相互の論理的関係を調べよ。ただし,f(x)f(x) は R\mathbb{R} で定義された実数値関数とする。

(1) f(x)f(x) の値は,つねに MM 以下である。

(2) f(x)f(x) の最大値は MM である。

(3) f(x)f(x) は MM 以下のすべての実数値をとり得る。

(4) f(x)f(x) の値域は区間 (−∞,M](-\infty, M] である。

02

答案

f(x)f(x) は R\mathbb{R} で定義された実数値関数とし,M∈RM\in\mathbb{R} とする。

(1) は

∀x∈R, f(x)≤M\forall x\in\mathbb{R},\ f(x)\le M

(2) は,「f(x)f(x) の値はつねに MM 以下である」かつ「MM を値としてとる xx が存在する」と言い換えられるから,

∀x∈R, f(x)≤M∧ ∃a∈R, f(a)=M\begin{aligned} &\forall x\in\mathbb{R},\ f(x)\le M \\ &\land\ \exists a\in\mathbb{R},\ f(a)=M \end{aligned}

(3) は

∀y∈R, y≤M⇒∃x∈R, f(x)=y\forall y\in\mathbb{R},\ y\le M \Rightarrow \exists x\in\mathbb{R},\ f(x)=y

(4) は,「f(x)f(x) の値はつねに MM 以下である」かつ「MM 以下のすべての実数値をとり得る」と言い換えられるから,

∀x∈R, f(x)≤M∧ ∀y∈R, y≤M⇒∃x∈R, f(x)=y\begin{aligned} &\forall x\in\mathbb{R},\ f(x)\le M \\ &\land\ \forall y\in\mathbb{R},\ y\le M \Rightarrow \exists x\in\mathbb{R},\ f(x)=y \end{aligned}

次に,相互の論理的関係を調べる。

(2) ならば,f(x)f(x) の値はつねに MM 以下であるから,

(2)⇒(1)(2)\Rightarrow(1)

また,(4) は (1) と (3) をあわせた条件であるから,

(4)  ⟺  (1)∧(3)(4)\iff (1)\land (3)

したがって,

(4)⇒(1),(4)⇒(3)(4)\Rightarrow(1),\qquad (4)\Rightarrow(3)

さらに,(1) と (3) が成り立てば,特に y=My=M として f(x)=Mf(x)=M となる xx が存在する。よって,

(1)∧(3)⇒(2)(1)\land(3)\Rightarrow(2)

以上より,

(4)⇒(2)⇒(1)(4)\Rightarrow(2)\Rightarrow(1)

一方,(2) から (3) は従わない。実際,f(x)=Mf(x)=M とすれば (2) は成り立つが,MM 未満の値をとらないから (3) は成り立たない。

また,(3) から (2) も従わない。実際,f(x)=xf(x)=x,M=0M=0 とすれば,00 以下のすべての値をとるので (3) は成り立つが,f(x)≤0f(x)\le 0 はつねには成り立たないから (2) は成り立たない。

03

Point

この回は,解法を覚えるというより,日本語と論理式の対応を覚える回です。見た目の似た文でも,∀\forall と ∃\exists の位置が変わるだけで意味は大きく変わります。

「つねに MM 以下」と「最大値は MM」は違う

(1)

∀x∈R, f(x)≤M\forall x\in\mathbb{R},\ f(x)\le M

が言っているのは,「値が上に飛び出さない」ということだけです。これは MM が上界であることを表しています。

一方,「最大値は MM」と言うためには,それだけでは足りません。さらに

∃a∈R, f(a)=M\exists a\in\mathbb{R},\ f(a)=M

が必要です。つまり,MM を実際にとる点が存在しなければなりません。

不等式の問題で等号成立条件を調べるのは,まさにこの存在条件を確認するためです。f(x)≤Mf(x)\le M を示しただけでは上界が分かるだけで,最大値が分かったことにはなりません。

∀y,∃x\forall y,\exists x は「値を埋める」条件

(3)

∀y∈R, y≤M⇒∃x∈R, f(x)=y\forall y\in\mathbb{R},\ y\le M \Rightarrow \exists x\in\mathbb{R},\ f(x)=y

は,「MM 以下の値を全部出せる」という意味です。

ここで大事なのは,∀x\forall x ではなく ∀y\forall y になっていることです。これは,xx についての条件ではなく,値そのもの yy について「その値を出せるか」を聞いています。

したがって,(3) だけでは MM より大きい値をとらないとは言っていません。値域を (−∞,M](-\infty, M] と言うには,「飛び出さない」条件である (1) も必要です。

値域は 2 つの条件に分かれる

(4) の「値域は (−∞,M](-\infty, M] である」は,「値はつねに MM 以下である」ことと「MM 以下のすべての値をとる」ことの 2 つに分かれます。

つまり,

(4)  ⟺  (1)∧(3)(4)\iff (1)\land(3)

です。

値域を言う問題では,「範囲からはみ出さない」と「その範囲をちゃんと埋める」を分けて考えると整理しやすくなります。

この問題では,自然言語の文を読んだときに,何に対して ∀\forall を置くのか,どこで ∃\exists が必要になるのかを見抜くことが大切です。

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