論理学で学ぶ数学 Theme3
問題
を実数の定数として、実数 についての条件
を考える。
(1) を満たす が存在するための の条件を求めよ。
(2) を満たす が存在するための の条件を求めよ。
(3) をともに満たす が存在するための の条件を求めよ。
答案
(1)
求める条件は
である。
よって、求める条件は
(2)
求める条件は
である。
とおくと、その判別式を として
よって
求める条件は
(3) 解法1
求める条件は
である。
は平方完成により
である。
そこで
とおくと、、 であり、
ここで
より、 となる点は である。これを とおく。
は定数であるから、 は の値によらずそれぞれ を頂点とする下に凸な放物線である。また
したがって、 の最小点は次のように決まる。
よって
のときは 、 のときは となり、いずれも を満たさない。したがって の場合だけを考えればよく、このとき
これを解いて、求める条件は
(3) 解法2( 平面で考える)
平面で考える。条件 は
である。これを満たす点 全体は、中心 、半径 の円の内部。また条件 は、平方完成により
である。これを満たす点 全体は、中心 、半径 の円の内部。

したがって、
とは、高さ の水平線が、2つの円の内部の共通部分と交わることを意味する。

よって、求める の範囲は、2つの円の内部の共通部分を 軸方向に射影した範囲。

まず、その射影の上下端が円の頂点で決まるかを確認する。共通部分の上端は、第1の円の上端 を超えない。もしこの点で上端が決まるなら、 は第2の円の内部になければならない。第2の円の左辺に代入すると
であり、 より
だから、 は第2の円の外部にある。よって、上端は第1の円の頂点では決まらない。
同様に、下端は第2の円の下端 で決まるかを調べる。第1の円の左辺に代入すると
だから、 は第1の円の外部にあり、下端もこの頂点では決まらない。
したがって、共通部分の上下端は、2つの円周の共有点で決まる。そこで共有点を求める。
したがって、2つの円周の共有点の 座標は
である。もとの不等式はどちらも円の内部を表すので、円周上の共有点そのものは含まれない。よって、求める の範囲は
Point
今回の中心は、 をただ「外す」のではなく、何を意味しているかを読み替えることです。
「存在する」を最小値で読む
まず (1) では を考えました。ここで は固定された定数で、動かすのは です。したがって、見ているのは「ある をうまく選べば不等式を満たせるか」という条件です。
このとき の最小値は ですから、
となります。つまり、 は「最小値が基準を下回る」と読み替えられるわけです。
「存在する」を判別式で読む
(2) では、 の二次式が負になる実数 が存在する条件を、判別式で読み替えています。 の係数が正である二次式は上に開く放物線ですから、それが 軸より下に入る、すなわち を満たす が存在することは、 軸と2点で交わること、つまり と同値です。
(1) が「最小値が基準を下回る」だったのに対し、(2) は「放物線が 軸を割り込む」。どちらも、 を の関数のふるまいに翻訳している点は同じです。
は「同じ 」を要求する
(3) では話が一段難しくなります。ここで大事なのは、
と
は違う、ということです。
前者は「同じ が の両方を満たす」という意味です。後者は「 を満たす はいるし、 を満たす もいる」という意味で、同じ である必要はありません。
集合で書けば、、 として
です。つまり「共通解があるか」を見ています。
を経由して に読み替える
(3) を読み替えます。ここで素朴に を区間で出していくと、根号を含む重い不等式が出てきます。そこで別の見方をしました。 かつ は、大きい方ですら 未満であることと同値です。
ここでさらに、 という記法を使います。 は、 を実数全体で動かしたときの の最小値を表します。たとえば です。記号の下に と添えるのは、「どの文字をどの範囲で動かして最小をとるか」を示すためです。これを使うと、
と読み替えます。戸惑いやすいのは、 と書くと が残っているように見えることです。しかし、これは「 を全部動かしたときの最小値」を表しており、結果はもう の式ではありません。 についての量化子は、この段階で消えています。
なぜ「存在する」が「最小値」に化けるのかは、(1) と同じ理屈です。「 未満にできる がある」ことと、「とりうる値の一番低いところが 未満」であることは同じです。一番低いところすら届かなければどこも届かず、一番低いところが届けばそこで条件が満たせます。
この読み替えができると、「条件を満たす が存在するかを調べる問題」が「最小値が基準を下回るかを調べる問題」になります。今回のように解集合で追うと計算が重くなる問題では、とても有効な見方です。
つり合う点で最小をとる
解法1の一番難しいところは、 の最小がどこで起こるかを見抜く点です。ここを丁寧にたどります。
まず、 は で最小、 は で最小をとります。2つの放物線は同じ形(同じ開き方)で、頂点の位置だけが横にずれて並んでいます。
ここで 、つまり「各 で2つのうち大きい方をとった値」を考えます。 となる を境にして、どちらが大きいかが入れかわります。
境より右側では上側にあるのは なので,
境より左側では上側にあるのは なので,
つまり のグラフは、右側は の放物線、左側は の放物線をつなぎ合わせた、V字のように谷を作る形になります。そして谷の底は、ちょうど2つの放物線が交わる の点です。
なぜ谷の底がそこなのかは、境の左右で がどう動くかを見ると分かります。境より右側で を左へ動かすと、 は小さくなっていきます( の頂点 へ近づくから)。逆に境より左側で を右へ動かすと、 も小さくなっていきます( の頂点 へ近づくから)。両側から境へ近づくほど は下がるので、最小は境、すなわち で達成されます。
直感的に言えば、 は「大きい方」を見るので、片方だけを小さくしても、もう片方が大きいままなら は下がりません。両方をできるだけ同時に小さくする妥協点が、ちょうど2つが等しくなる場所なのです。
ただし、この「谷の底が交点」という話には但し書きが要ります。境( となる )が2つの頂点 の間にあるときは、いま見たとおり交点が谷の底です。しかし が大きく外れて境が頂点の外側へ出てしまうと、谷の底は交点ではなく、上側にある放物線の頂点そのものになります。答案で 、、 と場合分けしたのは、この「境がどこにあるか」を で仕分けていたわけです。本問の答えはちょうど真ん中の場合に収まります。

この「つり合うところを見る」という発想は、いつでも機械的に使える公式ではありません。しかし今回のように、同じ向きに開く二次関数がずれて並んでいるときには、とても自然な考え方になります。
領域の切り口として見る
もう一つ大事な見方として、(3) は 平面で考えることもできます。条件 は
ですから、これは中心 、半径 の円の内部です。条件 は
ですから、中心 、半径 の円の内部です。
そして は、「高さ の水平線で切ったとき、2つの円の共通部分との切り口が空でない」という意味になります。つまり、 を固定して の存在を調べるという最初の見方を、平面図形として一気に見ているわけです。
この見方を使うと、はじめに注意した「 と は違う」が、そのまま絵になります。水平線の高さ を上から下へ動かしながら、その線が円とどう交わるかを4つの段階で見てみましょう。各段階で、 を満たす の範囲を青、 を満たす の範囲を橙、両方を満たす(重なる)範囲を緑で示します。

① 水平線が高すぎて、どちらの円とも交わらない。 を満たす も を満たす もない。
② 一方の円とだけ交わる。たとえば を満たす はあるが、 を満たす はない。
③ 両方の円と交わる。青の区間も橙の区間も存在する。しかし2つの区間は横にずれていて重ならない。つまり を満たす はいる、 を満たす もいるが、同じ で両方は満たせない。これが は真でも は偽になる、ちょうどその状況です。
④ 水平線が共通部分を貫く。青と橙の区間が重なり、その重なりが緑の区間です。ここではじめて、同じ が と を両方満たします。
③と④の違いは、青と橙の区間が「離れている」か「重なっている」かだけです。 を に安易に分配してよいなら③でも解があることになってしまいますが、実際には重なり(緑)がなければ共通の は存在しません。分配できない理由が、区間の重なりという形で目に見えるわけです。