数学
2026.06.29

論理学で学ぶ数学 Theme5

01

問題

aa を実数の定数として、実数 x,yx,y についての条件

p(x,y):y>−x2+(a−2)x+a−4∧y<x2−(a−4)x+3p(x,y):\quad y>-x^2+(a-2)x+a-4\land y<x^2-(a-4)x+3

を考える。次の各文が成り立つための aa の値の範囲を求めよ。

(1) どんな xx に対しても、それぞれ適当な yy をとれば、p(x,y)p(x,y) が成り立つ。

(2) 適当な yy をとれば、どんな xx に対しても、p(x,y)p(x,y) が成り立つ。

02

答案

f(x)=−x2+(a−2)x+a−4,g(x)=x2−(a−4)x+3f(x)=-x^2+(a-2)x+a-4,\qquad g(x)=x^2-(a-4)x+3

とおく。このとき

p(x,y)  ⟺  f(x)<y<g(x)p(x,y)\iff f(x)<y<g(x)

である。

(1)

求める条件は

∀x∈R,∃y∈R, p(x,y)\forall x\in\mathbb{R},\exists y\in\mathbb{R},\ p(x,y)

である。

xx を固定する。区間 (f(x),g(x))\bigl(f(x),g(x)\bigr) が空でないこと、すなわち f(x)<g(x)f(x)<g(x) が、その内部に yy が存在する条件であるから、

∃y∈R, f(x)<y<g(x)  ⟺  f(x)<g(x)\exists y\in\mathbb{R},\ f(x)<y<g(x)\iff f(x)<g(x)

である。したがって

∀x∈R,∃y∈R, p(x,y)  ⟺  ∀x∈R, f(x)<g(x)  ⟺  ∀x∈R, −x2+(a−2)x+a−4<x2−(a−4)x+3  ⟺  ∀x∈R, 2x2+(6−2a)x+7−a>0.\begin{aligned} \forall x\in\mathbb{R},\exists y\in\mathbb{R},\ p(x,y) &\iff \forall x\in\mathbb{R},\ f(x)<g(x) \\ &\iff \forall x\in\mathbb{R},\ -x^2+(a-2)x+a-4<x^2-(a-4)x+3 \\ &\iff \forall x\in\mathbb{R},\ 2x^2+(6-2a)x+7-a>0. \end{aligned}

2x2+(6−2a)x+7−a2x^2+(6-2a)x+7-a は xx について下に凸な二次式である。その判別式を DD とすると、

D=(6−2a)2−4⋅2(7−a)=4(a−3)2−8(7−a)=4(a2−4a−5)=4(a−5)(a+1).\begin{aligned} D &=(6-2a)^2-4\cdot2(7-a) \\ &=4(a-3)^2-8(7-a) \\ &=4(a^2-4a-5) \\ &=4(a-5)(a+1). \end{aligned}

下に凸な二次式がすべての実数 xx に対して正となる必要十分条件は D<0D<0 であるから、

∀x∈R, 2x2+(6−2a)x+7−a>0  ⟺  D<0  ⟺  4(a−5)(a+1)<0  ⟺  −1<a<5.\begin{aligned} \forall x\in\mathbb{R},\ 2x^2+(6-2a)x+7-a>0 &\iff D<0 \\ &\iff 4(a-5)(a+1)<0 \\ &\iff -1<a<5. \end{aligned}

よって、求める条件は

−1<a<5-1<a<5

(2) 解法1

求める条件は

∃y∈R,∀x∈R, p(x,y)\exists y\in\mathbb{R},\forall x\in\mathbb{R},\ p(x,y)

である。すなわち

∃y∈R,∀x∈R, f(x)<y<g(x)\exists y\in\mathbb{R},\forall x\in\mathbb{R},\ f(x)<y<g(x)

であるから、

∃y∈R,(∀x∈R, f(x)<y)∧(∀x∈R, y<g(x))\exists y\in\mathbb{R}, \left(\forall x\in\mathbb{R},\ f(x)<y\right) \land \left(\forall x\in\mathbb{R},\ y<g(x)\right)

である。

まず、yy を固定して、xx についての全称条件を処理する。

∀x∈R, f(x)<y  ⟺  ∀x∈R, −x2+(a−2)x+a−4<y  ⟺  ∀x∈R, x2−(a−2)x+y−a+4>0.\begin{aligned} \forall x\in\mathbb{R},\ f(x)<y &\iff \forall x\in\mathbb{R},\ -x^2+(a-2)x+a-4<y \\ &\iff \forall x\in\mathbb{R},\ x^2-(a-2)x+y-a+4>0. \end{aligned}

x2−(a−2)x+y−a+4x^2-(a-2)x+y-a+4 は xx について下に凸な二次式であるから、すべての実数 xx に対して正となる条件は、判別式が負であることである。よって

∀x∈R, f(x)<y  ⟺  (a−2)2−4(y−a+4)<0  ⟺  a2−4a+4−4y+4a−16<0  ⟺  a2−12−4y<0  ⟺  y>a2−124.\begin{aligned} \forall x\in\mathbb{R},\ f(x)<y &\iff (a-2)^2-4(y-a+4)<0 \\ &\iff a^2-4a+4-4y+4a-16<0 \\ &\iff a^2-12-4y<0 \\ &\iff y>\frac{a^2-12}{4}. \end{aligned}

同様に、

∀x∈R, y<g(x)  ⟺  ∀x∈R, y<x2−(a−4)x+3  ⟺  ∀x∈R, x2−(a−4)x+3−y>0.\begin{aligned} \forall x\in\mathbb{R},\ y<g(x) &\iff \forall x\in\mathbb{R},\ y<x^2-(a-4)x+3 \\ &\iff \forall x\in\mathbb{R},\ x^2-(a-4)x+3-y>0. \end{aligned}

x2−(a−4)x+3−yx^2-(a-4)x+3-y は xx について下に凸な二次式であるから、

∀x∈R, y<g(x)  ⟺  (a−4)2−4(3−y)<0  ⟺  a2−8a+16−12+4y<0  ⟺  a2−8a+4+4y<0  ⟺  y<−a2+8a−44.\begin{aligned} \forall x\in\mathbb{R},\ y<g(x) &\iff (a-4)^2-4(3-y)<0 \\ &\iff a^2-8a+16-12+4y<0 \\ &\iff a^2-8a+4+4y<0 \\ &\iff y<\frac{-a^2+8a-4}{4}. \end{aligned}

したがって、求める条件は

∃y∈R,(y>a2−124∧y<−a2+8a−44)\exists y\in\mathbb{R}, \left( y>\frac{a^2-12}{4} \land y<\frac{-a^2+8a-4}{4} \right)

である。すなわち

∃y∈R, a2−124<y<−a2+8a−44\exists y\in\mathbb{R},\ \frac{a^2-12}{4}<y<\frac{-a^2+8a-4}{4}

である。

このような実数 yy が存在する条件は

a2−124<−a2+8a−44\frac{a^2-12}{4}<\frac{-a^2+8a-4}{4}

であるから、

a2−124<−a2+8a−44  ⟺  a2−12<−a2+8a−4  ⟺  2a2−8a−8<0  ⟺  a2−4a−4<0  ⟺  (a−2)2<8  ⟺  2−22<a<2+22.\begin{aligned} \frac{a^2-12}{4}<\frac{-a^2+8a-4}{4} &\iff a^2-12<-a^2+8a-4 \\ &\iff 2a^2-8a-8<0 \\ &\iff a^2-4a-4<0 \\ &\iff (a-2)^2<8 \\ &\iff 2-2\sqrt2<a<2+2\sqrt2. \end{aligned}

よって、求める条件は

2−22<a<2+222-2\sqrt2<a<2+2\sqrt2

(2) 解法2

求める条件は

∃y∈R,∀x∈R, p(x,y)\exists y\in\mathbb{R},\forall x\in\mathbb{R},\ p(x,y)

である。すなわち

∃y∈R,∀x∈R, f(x)<y<g(x)\exists y\in\mathbb{R},\forall x\in\mathbb{R},\ f(x)<y<g(x)

であるから、

∃y∈R,(∀x∈R, f(x)<y)∧(∀x∈R, y<g(x))\exists y\in\mathbb{R}, \left(\forall x\in\mathbb{R},\ f(x)<y\right) \land \left(\forall x\in\mathbb{R},\ y<g(x)\right)

である。

ここで、

∀x∈R, f(x)<y\forall x\in\mathbb{R},\ f(x)<y

は、f(x)f(x) の最大値が yy より小さいことと同値である。また、

∀x∈R, y<g(x)\forall x\in\mathbb{R},\ y<g(x)

は、yy が g(x)g(x) の最小値より小さいことと同値である。したがって、求める条件は

∃y∈R, max⁡x∈Rf(x)<y<min⁡x∈Rg(x)\exists y\in\mathbb{R},\ \max_{x\in\mathbb{R}}f(x)<y<\min_{x\in\mathbb{R}}g(x)

である。

f(x)f(x) を平方完成すると、

f(x)=−x2+(a−2)x+a−4=−(x−a−22)2+(a−2)24+a−4.\begin{aligned} f(x) &=-x^2+(a-2)x+a-4 \\ &=-\left(x-\frac{a-2}{2}\right)^2+\frac{(a-2)^2}{4}+a-4. \end{aligned}

よって

max⁡x∈Rf(x)=(a−2)24+a−4=a2−124\max_{x\in\mathbb{R}}f(x)=\frac{(a-2)^2}{4}+a-4=\frac{a^2-12}{4}

また、g(x)g(x) を平方完成すると、

g(x)=x2−(a−4)x+3=(x−a−42)2+3−(a−4)24.\begin{aligned} g(x) &=x^2-(a-4)x+3 \\ &=\left(x-\frac{a-4}{2}\right)^2+3-\frac{(a-4)^2}{4}. \end{aligned}

よって

min⁡x∈Rg(x)=3−(a−4)24=−a2+8a−44\min_{x\in\mathbb{R}}g(x)=3-\frac{(a-4)^2}{4}=\frac{-a^2+8a-4}{4}

したがって、求める条件は

∃y∈R, a2−124<y<−a2+8a−44\exists y\in\mathbb{R},\ \frac{a^2-12}{4}<y<\frac{-a^2+8a-4}{4}

である。

このような実数 yy が存在する条件は

a2−124<−a2+8a−44\frac{a^2-12}{4}<\frac{-a^2+8a-4}{4}

であるから、

a2−124<−a2+8a−44  ⟺  a2−12<−a2+8a−4  ⟺  2a2−8a−8<0  ⟺  a2−4a−4<0  ⟺  (a−2)2<8  ⟺  2−22<a<2+22.\begin{aligned} \frac{a^2-12}{4}<\frac{-a^2+8a-4}{4} &\iff a^2-12<-a^2+8a-4 \\ &\iff 2a^2-8a-8<0 \\ &\iff a^2-4a-4<0 \\ &\iff (a-2)^2<8 \\ &\iff 2-2\sqrt2<a<2+2\sqrt2. \end{aligned}

よって、求める条件は

2−22<a<2+222-2\sqrt2<a<2+2\sqrt2
03

Point

今回の中心は、量化子 ∀,∃\forall,\exists の順序です。

∀x,∃y\forall x,\exists y と ∃y,∀x\exists y,\forall x は違う

(1) の条件は

∀x∈R,∃y∈R, p(x,y)\forall x\in\mathbb{R},\exists y\in\mathbb{R},\ p(x,y)

です。これは、「xx を先に決める。そのあとで、その xx に応じて yy を選んでよい」という意味です。

したがって、yy は xx ごとに変わってかまいません。今回なら、各 xx に対して

f(x)<y<g(x)f(x)<y<g(x)

を満たす yy が存在すればよいので、

f(x)<g(x)f(x)<g(x)

をすべての xx について調べればよいことになります。

一方、(2) の条件は

∃y∈R,∀x∈R, p(x,y)\exists y\in\mathbb{R},\forall x\in\mathbb{R},\ p(x,y)

です。これは、「先にひとつの yy を決める。その同じ yy で、すべての xx に対応しなければならない」という意味です。

したがって、yy を xx に応じて変えることはできません。

見た目は似ていても、

∀x,∃y, p(x,y)∃y,∀x, p(x,y)\forall x,\exists y,\ p(x,y)\qquad \exists y,\forall x,\ p(x,y)

は一般には別の意味になります。

内側の量化子から処理する

(2) の解法1では、

∃y∈R,∀x∈R, f(x)<y<g(x)\exists y\in\mathbb{R},\forall x\in\mathbb{R},\ f(x)<y<g(x)

を、内側にある ∀x\forall x から処理しました。

まず

∀x∈R, f(x)<y\forall x\in\mathbb{R},\ f(x)<y

を、yy を固定したまま xx の二次不等式として調べます。これにより

y>a2−124y>\frac{a^2-12}{4}

が得られます。

同じように

∀x∈R, y<g(x)\forall x\in\mathbb{R},\ y<g(x)

を処理すると、

y<−a2+8a−44y<\frac{-a^2+8a-4}{4}

が得られます。

つまり、はじめは x,yx,y についての条件だったものが、

∃y∈R, a2−124<y<−a2+8a−44\exists y\in\mathbb{R},\ \frac{a^2-12}{4}<y<\frac{-a^2+8a-4}{4}

という、yy についての存在条件に変わります。最後に、このような yy が存在する条件を調べれば、aa だけの条件になります。

このように、量化子が重なっているときは、内側の変数から順に消去していくと機械的に処理できます。

ここでの ∧\land は分けてよい

ひとつ確認しておきます。いまの処理では、

∀x∈R, (f(x)<y∧y<g(x))\forall x\in\mathbb{R},\ (f(x)<y\land y<g(x))

を

(∀x∈R, f(x)<y)∧(∀x∈R, y<g(x))(\forall x\in\mathbb{R},\ f(x)<y)\land(\forall x\in\mathbb{R},\ y<g(x))

に分けてから、ff 側と gg 側を別々に処理しました。Theme3・4 では「分配できない」例ばかり見てきたので気になるところですが、これは許されます。Theme4 で見たとおり、∀\forall は ∧\land には分配できるからです。各 xx で2つの不等式がともに成り立つことと、一方が全 xx で成り立ち、かつもう一方も全 xx で成り立つことは、同じことです。

最大値・最小値で読む

(2) の解法2では、同じ処理を最大値・最小値で読み替えました。これは Theme3 でやったことの裏返しです。

Theme3 では、「ある xx で 1515 未満にできる」を「とりうる値の一番低いところが 1515 未満」と読み、∃x\exists x を min⁡\min で書き換えました。今回必要なのはその双対です。すなわち、

∀x∈R, f(x)<y\forall x\in\mathbb{R},\ f(x)<y

とは「f(x)f(x) がどの値をとっても yy より小さい」、つまり「一番高いところすら yy より小さい」ということですから、

∀x∈R, f(x)<y  ⟺  max⁡x∈Rf(x)<y\forall x\in\mathbb{R},\ f(x)<y \iff \max_{x\in\mathbb{R}}f(x)<y

と読めます。∃\exists を min⁡\min で読むなら、∀\forall は max⁡\max で読む。一番高いところさえ届かなければどこも届かない、という理屈で、Theme3 と上下が反転しているだけです。

同じく、

∀x∈R, y<g(x)  ⟺  y<min⁡x∈Rg(x)\forall x\in\mathbb{R},\ y<g(x) \iff y<\min_{x\in\mathbb{R}}g(x)

です。こちらは yy が下から g(x)g(x) を抑える側なので、gg の一番低いところ min⁡g\min g が基準になります。

よって、(2) の条件は

∃y∈R, max⁡x∈Rf(x)<y<min⁡x∈Rg(x)\exists y\in\mathbb{R},\ \max_{x\in\mathbb{R}}f(x)<y<\min_{x\in\mathbb{R}}g(x)

と読めます。このような yy が存在するためには、

max⁡x∈Rf(x)<min⁡x∈Rg(x)\max_{x\in\mathbb{R}}f(x)<\min_{x\in\mathbb{R}}g(x)

であればよいわけです。

解法1は「量化子を順に消す」方法、解法2は「全称条件を最大値・最小値で読む」方法です。どちらも同じことをしていますが、前者は機械的、後者は見通しがよい、という違いがあります。

同じ yy であること

(2) で大切なのは、

∃y∈R,(y>a2−124∧y<−a2+8a−44)\exists y\in\mathbb{R}, \left( y>\frac{a^2-12}{4} \land y<\frac{-a^2+8a-4}{4} \right)

の yy が同じ文字だということです。

Theme3 の「同じ xx」と同じことが、ここでも起きています。上の式は、「下限より大きい yy が存在する」と「上限より小さい yy が存在する」を別々に言っているのではありません。ひとつの同じ yy が、両方の不等式を同時に満たさなければならないのです。

言いかえると、

∃y∈R,(P(y)∧Q(y))\exists y\in\mathbb{R},(P(y)\land Q(y))

を、∃\exists を ∧\land に分けて

(∃y, P(y))∧(∃y, Q(y))(\exists y,\ P(y))\land(\exists y,\ Q(y))

としてはいけない、ということです。Theme3 で「∃\exists は ∧\land に分配できない」と見たその罠が、yy について再び現れています。下限を超える yy はいくらでもあるし、上限を下回る yy もいくらでもありますが、それだけでは「同じひとつの yy」が両方を満たす保証にはなりません。

だからこそ、最後に見るべき条件は

a2−124<−a2+8a−44\frac{a^2-12}{4}<\frac{-a^2+8a-4}{4}

です。これは、実数の開区間

(a2−124,−a2+8a−44)\left(\frac{a^2-12}{4},\frac{-a^2+8a-4}{4}\right)

が空でない条件を調べている、と見ることもできます。下限が上限より小さくなって、はじめて両方を満たす yy が中に入るからです。

成り立つ向きは一つだけ

ここまで (1)(2) を別々に解いてきましたが、二つの答えは無関係ではありません。並べてみます。

∀x,∃y, p(x,y)  ⟺  −1<a<5∃y,∀x, p(x,y)  ⟺  2−22<a<2+22\begin{aligned} \forall x,\exists y,\ p(x,y) &\iff -1<a<5\\ \exists y,\forall x,\ p(x,y) &\iff 2-2\sqrt2<a<2+2\sqrt2 \end{aligned}

ここで 2±222\pm2\sqrt2 は −1-1 と 55 の内側にあります。実際、

2−22>−1  ⟺  3>22  ⟺  9>82+22<5  ⟺  22<3  ⟺  8<9\begin{aligned} 2-2\sqrt2>-1 &\iff 3>2\sqrt2 \iff 9>8\\ 2+2\sqrt2<5 &\iff 2\sqrt2<3 \iff 8<9 \end{aligned}

がともに成り立つので、

(2−22, 2+22)⊊(−1, 5)(2-2\sqrt2,\ 2+2\sqrt2)\subsetneq(-1,\ 5)

です。(2) が成り立つ aa では、かならず (1) も成り立つ。けれども逆はそうではありません。

これは偶然ではなく、量化子の順序がもともと持っている性質です。一般に、

∃y,∀x, p(x,y)  ⟹  ∀x,∃y, p(x,y)\exists y,\forall x,\ p(x,y)\;\Longrightarrow\;\forall x,\exists y,\ p(x,y)

はつねに成り立ちます。すべての xx に同時に効く yy が一つあるなら、各 xx に対しても、その同じ yy をそのまま使えばよいからです。Theme4 の終わりに触れた、一様か xx 依存か、という問いの答えがこれで、一様な ∃y∀x\exists y\forall x のほうが強く、xx 依存の ∀x∃y\forall x\exists y のほうが弱いわけです。

逆向き

∀x,∃y, p(x,y)  ⟹  ∃y,∀x, p(x,y)\forall x,\exists y,\ p(x,y)\;\Longrightarrow\;\exists y,\forall x,\ p(x,y)

は一般には成り立ちません。その反例が、包含のすきま 2+22<a<52+2\sqrt2<a<5 にあります。たとえば a=4910a=\dfrac{49}{10} をとると、−1<4910<5-1<\dfrac{49}{10}<5 より (1) は成り立ちますが、(2910)2=841100>8=(22)2\left(\dfrac{29}{10}\right)^2=\dfrac{841}{100}>8=(2\sqrt2)^2 より 4910>2+22\dfrac{49}{10}>2+2\sqrt2 ですから (2) は成り立ちません。つまり、各 xx に対しては yy をとれるのに、すべての xx を同時に賄う一つの yy は存在しない。∀x∃y\forall x\exists y は真で、∃y∀x\exists y\forall x は偽です。

なぜそうなるかは、条件 f(x)<y<g(x)f(x)<y<g(x) を絵にすると見えます。ff は上に凸、gg は下に凸ですから、p(x,y)p(x,y) を満たす点 (x,y)(x,y) は二つの放物線にはさまれた帯です。(1) は「どの xx でも帯が空でない」、すなわち各縦線が帯と交わること f(x)<g(x)f(x)<g(x)。(2) は「一本の水平線 y=cy=c が帯ぜんぶを貫く」、すなわち max⁡f<c<min⁡g\max f<c<\min g となる高さ cc があることです。

反例の範囲では、帯はどの xx でも空でないのに、ff の一番高いところ max⁡f\max f が gg の一番低いところ min⁡g\min g を下回りません。しかも max⁡f\max f と min⁡g\min g は別々の xx で起きるので、水平線をどこに引いても、ff をよけきれば gg にぶつかり、gg をよけきれば ff にぶつかる。各縦線では帯に入れるのに、一本の横線では貫けないのです。

左: max f < min g のとき一本の水平線が帯を貫き、すべての x に効く一つの y がとれる。右: 反例範囲では各 x で帯は空でないが max f ≧ min g となり、帯を貫く水平線がとれない。順序を入れ替えると真偽が変わることの図示。

順序を入れかえられるとき、入れかえられないとき

最後に、今回の構造を量化子2つの並びとして見渡しておきます。

∃x,∃y, p(x,y)  ⟺  ∃y,∃x, p(x,y)∀x,∀y, p(x,y)  ⟺  ∀y,∀x, p(x,y)∃y,∀x, p(x,y)  ⟹  ∀x,∃y, p(x,y)\begin{aligned} \exists x,\exists y,\ p(x,y) &\iff \exists y,\exists x,\ p(x,y)\\ \forall x,\forall y,\ p(x,y) &\iff \forall y,\forall x,\ p(x,y)\\ \exists y,\forall x,\ p(x,y) &\;\Longrightarrow\; \forall x,\exists y,\ p(x,y) \end{aligned}

上の2行は、同じ種類の量化子が並んだ場合です。∃\exists どうし、∀\forall どうしなら、順序を入れかえても意味は変わりません。同種は交換自由です。

変わるのは3行目、種類の違う ∀\forall と ∃\exists が並んだときだけです。このときは   ⟺  \iff ではなく、∃y∀x\exists y\forall x から ∀x∃y\forall x\exists y への一方向しか成り立ちません。一様な yy が一つあれば各 xx に使い回せますが、各 xx ごとに選び直した yy を一つにまとめられるとは限らないからです。今回ずっと見てきたのは、この3行目でした。

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